【Fade Theory】デニムへの影響①(硬水と軟水)

Fade Theory

Fade Theory 第1回。

洗濯に欠かせない「水」。
普段あまり意識することはないが、その水質の違いがデニムの色落ちや風合いに影響を与える可能性がある。

今回は、上水における「軟水」と「硬水」の違いに着目し、それが洗濯を通してデニムにどのような変化をもたらすのか考えてみたい。

一般に、「軟水」と「硬水」の違いは、水中に溶け込んでいるカルシウムイオン(Ca²⁺)マグネシウムイオン(Mg²⁺)の量によって決まる。
この含有量が多い水を「硬水」、少ない水を「軟水」と呼ぶ。

では、この違いはデニムの色落ちに直接影響するのだろうか。

参考文献や洗濯に関する資料を読む限り、結論は少し違う。

水の硬度そのものが直接デニムの色落ちを変えるというより、硬水と洗剤の相性が洗濯結果を左右し、その積み重ねが色落ちに影響を与える可能性が高い。

つまり重要なのは、
「硬水か軟水か」ではなく、「どんな水で、どんな洗剤を使うか」という組み合わせである。

硬水と洗剤の関係

まず、前提として次の3点を押さえておきたい。

洗濯用洗剤には、大きく分けて「石鹸洗剤」と「合成洗剤」がある

石鹸洗剤は硬水との相性が悪く、洗浄力が低下しやすい

洗剤には、水中の硬度成分の影響を抑えるビルダー(軟水化補助剤)が配合されることがある

現在主流となっている界面活性剤ベースの合成洗剤は、硬水の影響を比較的受けにくい設計になっている。
一方で、洗浄効率を安定させるために、硬度成分を封鎖・除去する補助剤(ビルダー)が配合されている製品も多い。

①「石鹸洗剤」と「合成洗剤」

日本で販売されている洗濯用洗剤は、成分表示を見ることで大まかに判別できる。

石鹸洗剤の場合、主成分として

  • 純石けん分(脂肪酸ナトリウム)
  • 純石けん分(脂肪酸カリウム)
  • 脂肪酸Na
  • 脂肪酸K

などの表示がある。

これらは脂肪酸塩を主洗浄成分とする、いわゆる「石けん系洗剤」である。

一方の合成洗剤では、

  • 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸Na(LAS)
  • アルファスルホ脂肪酸エステルNa(MES)
  • ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)
  • アルキル硫酸エステルNa(AS)
  • アルキルエーテル硫酸エステルNa(AES)

などの界面活性剤が主成分として使われる。

現在の一般的な液体洗剤・粉末洗剤の多くはこちらに分類される。

②「石鹸洗剤」と「硬水」

石鹸洗剤の主成分である脂肪酸塩は、硬水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンと結びつきやすい。

すると、水に溶けにくい「金属石鹸」(石鹸カス)が生成される。

この反応が起こると、本来汚れを包み込んで洗い流すはずの洗浄成分が消費されてしまうため、

  • 泡立ちが悪くなる
  • 汚れ落ちが低下する
  • 洗浄ムラが生じやすくなる

といった影響が出る。

さらに、この金属石鹸は不溶性で繊維に残留しやすく、

  • 生地がごわつく
  • 白っぽくくすむ
  • 灰色がかったトーンになる

といった風合いの変化につながる可能性もある。

色落ちの観点で見れば、青の抜け方そのものより、生地表面の見え方や質感に差が出ると考えた方が自然かもしれない。

③ ビルダー(軟水化補助剤)の役割

洗剤に配合されるビルダーには、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンを封鎖したり、不溶化して働きを抑えたりする役割がある。

これにより、界面活性剤や石鹸成分が硬度成分と無駄に反応せず、汚れの除去にしっかり働けるようになる。

ただし、洗浄環境がアルカリ側に寄ったり、洗剤成分が繊維に残留したりすると、

  • 酸化の促進
  • 黄ばみ(黄変)
  • 風合いの硬化

といった経年変化を招く可能性もある。

ちなみに、Yシャツなどのアイロンがけ後、黄ばむ現象も洗剤成分等の残留が影響しているようだ。

洗浄力を高める処方が、必ずしも生地に優しいとは限らない。

ここにもまた、洗濯の難しさがある。

まとめ

硬水そのものが直接インディゴを脱色させるわけではない

硬水×石鹸洗剤の組み合わせでは、洗浄ムラや金属石鹸の残留が起こりやすい

その結果、生地の風合いや見え方に変化が生まれる可能性がある

デニムの色落ちを左右するのは、水の硬度単体ではなく「水と洗剤の組み合わせ」である

【参考ページ】

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How Hard Water Affects The Laundry Process

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